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■ 今月読んだ本
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第１７回 イシグロ・ワールド
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先回書いた３６日間の研修も残すところ数日、提出レポートの目処がつき、ゆったりした気分で久しぶりに小説を読んだ。カズオ・イシグロの５年ぶりの新作『わたしたちが孤児だったころ』（原作2000年、早川書房、2001年）である。
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今までほぼ全作読んだと言える作家は福永武彦とサリンジャーくらいだが、故人であったり断筆後であったりした。同じ時代を生きている作家はイシグロだけである。
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長崎で生まれ５歳で渡英したイシグロは、『女たちの遠い夏』（82年）、『浮世の画家』（86年）という実に感銘深い作品の後、『日の名残り』(89年)でブッカー賞を受賞した。
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私は第３作以降、次作がいつ出るかと待ちわびている大ファンである。そして、『充たされざる者』（95年）、『わたしたちが…』と期待を裏切っていない。
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イシグロ・ワールドの魅力を簡単に言えば、「消えてしまった両親の影を何年も追いかけている孤児のように世界に立ち向かう」運命を、一見リアリズムながら実はどこまでが現実でどこからが幻想なのかわからないシュールな手法で描く点であろう。
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最近作を一気に読んで満足した私は、今、何年後かの次作を楽しみに待っている。大家としてさらに磨きがかかることだろう。
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