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■ アメリカの涯・僕の振出し
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第１９回 石鹸で口を洗う
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罵りの言葉の多寡は、その言語を用いる文化を計る何らかの尺度となり得るだろうか。
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Motherfucker、 Cocksucker、 Assholeなどという、いわゆるSwear Wordを日本語に置換えようとしたことのある人なら、その難しさに手を焼く（直訳でいくか、意訳か。因みに村上春樹のsolutionは「訳さない」らしい）と同時に、日本語のこの種の言葉の乏しさは比較論的に何を意味するのか、という疑問が脳裏を掠めたことぐらいはあるに違いない。
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先日読んだあるミステリーに、Cocksuckerを「このち○ぽ吸い野郎！」とあって
、あ、この人直訳派か、と笑ってしまった。
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こういった罵りが往々にして性的なトーンを帯びているのは何故だろう。
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Assholeは「ケツの穴」。若い女の子でも日常的に使う言葉だ。日本人の感覚ではガールフレンドに肛門呼ばわりされたら再起不能かもしれない。
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「アニーホール」の回想シーンで、額にニッケル（五セント玉）を貼り付ける「トリック」を披露してくれたニッケルおじさん（Uncle
Nickel）にウディ・アレン少年が一言「Asshole」。サブタイトルには「ばーか」とあったかな。
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ジョークをひとつ
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ある大学の教授が幼稚園児を対象に感覚（sensory）の調査。Lifesavorという丸くて穴のあいたキャンデーを舐めさせ、色とフレーバーを同定（アイデンティファイ）させるというもの。
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「オレンジ色、オレンジ！」
「赤、苺！」といった具合。
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肌色状の「ハニー」で子供達は戸惑った。それではヒント、と教授が「これはね、そうだな、時々きみ達のママがパパをこう呼ぶかな」
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するとひとりの女の子が恐慌をきたして立上り、飴を吐き出すと、仲間に向かって叫んだ「みんなも早く吐き出して！これはAssholeよ！」
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身振りの方では、立てた中指をぐっと突上げてファックユーというあれがどうも身も蓋もない。性的なものが多いと、罵り言葉の方でも触れたが、この女性を大切にする国で、性的なPenetration（貫通）を最大限の冒涜と考えている様子であるのは何故だろう。
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高尚なジャーナルを外国語でとはいえ侮蔑の言葉で汚してしまったが、アメリカでは家庭でこういう言葉を子供が使うと「I
will wash out your mouth with soap!」とお母さんに叱られるのである。あ〜ん。
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