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■ 定有堂雑記
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第十回 キューブリック
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先日、博多から大井実さんが見えた。粘り強く本屋開業を志している人で、２年程前にも一度お会いした。
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拠点を入手したとの事だったので、夜を徹して語り合った。繁華街中央を少しはずれる。ゆとりある人たちが住む住宅街。店名は「キューブリック」。
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人生の途中から町の本屋へ転じようと志す。それは「独立自営」への夢だ。『就職しないで生きるには』という本があるけれども、それも生き方としての独立自営のすすめだったと思う。
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「どんな店にしたいの？」「ゆるやかに生活を楽しむ大人の本屋」「雑誌で例えればどんなの？」と聞くのが私は好きだ。「うーん、『サライ』みたいなの」と、大井さん。
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本屋に大切なのは、必ずしも「独創」ではないと思う。こんな豊かな「本の世界」で、なにも一から始める必要はない。いいものを見聞し、自分の「身の丈」で選ぶ。つまり「目利き」が一番大事。
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いまは雑誌感覚の本屋づくり、というのがいい。棚の分類で悩んでいたけど、本屋って雑誌ですヨ。分類はコンテンツ、つまり目次。そこを開けば豊穣な素材（ソース）が広がっている。
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大井さんのロケーションを聞いてたら、「あれ、これって、うちと同じだ」とあとで気付いた。そうか、むしろ自分でやるべきことだったんだ。うーん、自分の明日を開く、とてもすてきな出会いだった、とうれしくなった。
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