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■ 今月読んだ本
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第八回
政治家と心情倫理
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「政治を変える。勝算はあります。」とマスコミで宣言し期待を持たせた彼が敵前逃亡したのは、もはや何ヶ月も前のことのようだ。
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確かに彼の思いは私たちに伝わった。しかし、政治の良し悪しは結果責任で評価される。権謀術数を操るあくどい政治屋でも、「失われた９０年代」を打破する構造改革を進めさえすれば、後世の歴史家、政治学者は高く評価するのである。その点で、彼は政治屋にも政治家にもなりきれなかった。
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上垣外憲一『暗殺・伊藤博文』（ちくま新書、2000年）は、明治の大？政治家の暗殺に焦点をあて、これまでほとんど触れられることのなかった伊藤博文の対朝鮮政策、大陸政策に踏み込んだ好著である。
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狙撃角度と銃弾の種類は安重根犯人説を否定に導くという伊藤の側近で随行員だった室田義文の証言は歴史の闇を物語るが、私はむしろ伊藤の政治姿勢に大いに関心を抱いた。
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国際協調を唱え、明治の元勲として軍の重しとなった彼は、韓国総監としては国内主流派から「手ぬるい」と酷評される穏健派であった。しかし、その彼が結果的には弾圧を強行し、植民地化を推し進めたのも事実である。 心情倫理は、政治家としての評価に直結しない。政治家を裁くのは、責任倫理によってのみである。
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岩田 直樹
(いわた なおき)
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高校で数学を教える。十代後半から二十歳過ぎまでは人並みに小説を乱読したが、ここ十年ほどは、現象学からはじめて、思想書をゆっくりと読み進んでいる。
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告知板
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